お客様の挑戦
テネシー州チャタヌーガに拠点を置く Fillauer 社の子会社である Stealth Composites社は、世界中の顧客に向けて下肢の人工補装具を製造しています。糖尿病の発生率や高齢化・人口の急激な増加に伴い、このような装置の需要は着実に上昇しています。
Stealth Composites 社は、最先端の義足を市場に出すことを模索していました。理想的なのは、「ロールオーバー」と呼ばれるつま先からかかとへの実際の体重移動が実現でき、機能的に長く使える信頼性の高い義足です。
"Stealth Composites 社の社長である Eric Rubie 氏は、「高い機能性があり、なお且つ頑丈な足を造るのは、義足開発者にとって長年の課題でした」と述べています。「しかし、競争の激しい市場への新規参入者として、これこそが私たちが作るべきものだと考えました。」
Stealth Composites 社は、開発を促進させ、製品が実際に柔軟性と耐久性を兼ね備えていることを確認するために、開発のできるだけ早い段階でプロトタイプの疲労寿命を徹底的に評価し、設計変更に効率的に対応できるようにしました。
これまで義足メーカーは、すべての下肢用人口装具の全体的なガイドラインを定めた ISO 10328 規格に特化した試験を実施してきました。しかし、実際に使用された製品の不具合は、ISO 10328 に基づくラボ試験の結果とはあまり相関しない関連性がないことがわかりましたISO 10328 準拠の試験だけでは、実際の不具合を十分予測することができないため、品質を重視する開発者は、プロトタイプを実際のボランティアに試してもらう実地試験に頼らざるをえなくなりました。こうした設計検証の方法は、高額で再現性が低いことに加え、製品化までの期間が大幅に遅れ、多くの場合 6 ヶ月もの時間を要することになります。
このような状況から、最終的には ISO 10328:2006の17.2 項に記載されている短下肢構造試験方法に弱点があることが判明し、その後、より高度な試験方法が開発され、後に ISO 22675 に明記されました。この新しい手順では、運動プロファイルと同期した負荷率をより正確にシミュレートできるので、結果として、実際に経験する不具合(または性能)を精度よく再現することができます。
Rubie 氏は、ISO 22675 規格に基づいて試験を行えば、市場を牽引する義足をより早く製造できると考えていましたが、厳しい新規格の機械的要件を満たすには問題があることが分かっていました。「ISO 22675 に準拠しているかどうかを判断できる試験システムは市場にほとんど出回っておらず、自社で開発する時間もノウハウもありませんでした」と Rubie 氏は述べています。「そこで、外部のパートナーを探すことにしました。最終的にはMTSを選択しました。特に個別の特注開発に関しては、MTSの専門性の右に出るパートナーはいませんでした。」
MTS のソリューション
MTS は Stealth Composites 社と緊密に協力して、歩行時の負荷と動きを現実的に再現する試験システムを開発し、ISO 22675 の準拠を判断する高精度で一貫性のある試験プロファイルを提供しました。このシステムは現在、Bionix® 義足試験システムとして販売されています。
Stealth Composites 社と共同で開発した新しい試験システムでは、義足をチューブアダプター(パイロン)に装着し、膝から力を加え、角度制御された足首傾斜テーブルと同期させることで、非常に現実的な歩行シミュレーションを実現しています。ISO 22675 で要求されている現実的で同期した負荷レベルの範囲を使用すると、特に ISO 10328 の17.2 項のより基本的な試験要件と比較した場合、義足の性能と耐久性を高度に予測する試験プロファイルを生成できます。
お客様のメリット
Rubie 氏によると、MTS の短下肢試験システムにより、Stealth Composites 社は、性能と装着感の両方で患者の期待を上回る動的応答を提供する義足を製造することができました。また、実際の歩行時のロールオーバー感覚も再現しています。
同社は、市場で他社に競合できる自信があります。「この試験システムでは、それぞれのプロトタイプを徹底的に、そして現実的かつ再現性の高い方法で試験していることを実感しています」とRubie 氏は述べています。「耐久性の評価を ISO 10328 規格や患者の試用のみに頼っていた時には得られない感覚です。」
また、Bionix システムが有する高度で再現性のある耐久性試験を行う機能により、Stealth Composites 社の製品化までの期間短縮を実現しました。
「今では、長期的な患者の試用に頼ることなく、加速した疲労試験を行うことができるようになりました」とRubie 氏は言います。「機械試験のスピードと精度に加え、患者さんからの有効なフィードバックを組み合わせることで、プロトタイプの評価をより迅速に行い、より良い製品をより早く発売することができるようになりました。この実現において、MTSとの提携は非常に有効でした。」